スタッフモチベーションの原点

スタッフ育成のご依頼を、各種事業者さんから頂く時、私はいつも「仕事のモチベーション」については、小学生が学ぶ「ミニバスケットボール」のチームを例えにしてお話ししています。

これは時に、新入社員研修だったはずが、同席されていた人事部中間管理職の方々にまで響くこともあります。さて、そのポイントとは…

チームの中で自分の仕事を理解

私は、娘が地元小学校のミニバスケを卒団してからもう何年も経つのに、いまだに地元の子供たちの様子を窺いに行っています。
バスケ指導者ではありませんが、地域ぐるみで地元の子供たちを育むというチーム方針に共感し、娘がお世話になった恩返しで、たまに子供達に声掛けしています。

 

ところが…私が今でも時間を見つけては、地元ミニバスケに顔出しするのには、大きな理由があるのです。

 

私の娘は、小学校2年生からバスケットボールを始めました。
その影響から、多くの試合や練習風景を見る機会が増える中、少年スポーツも社会人も、「組織での働き」については、本質的に良く似ていることを実感するようになりました。
今でも子供たちの行動やご指導者の言葉から、組織運営の観点でも、大きな「気づき」をもらい続けているからです。

 

ここからは、当たり前の事を言うようですが、この当たり前のことが、大人になってからできていないことが案外多いものです。忘れかけていた大切な「仕事に対する心構えや姿勢」を、子供たちの真剣な眼差しから思い出させてくれるという感じでしょうか…。

さて、それは何か…?結論から言いますと…どのミニバスケのチームも、どの会社も…『自分の仕事を理解している』、これをしっかり判っている個人が多く集まるチーム(組織)は…強いということです。

自分にしかできない仕事は必ずある

ミニバスケのご指導者は、日頃から次のようなことを子供たちに伝えようと努力されています。

『組織の全体像を把握しながら、自分の役割を考えてしっかりと「仕事」をする。そのためには常に「考える」「感じる」ことが大事。最初から何も意識しないで「作業」にしてしまうと、チームも本人も後々しんどい。』

これを子供たちに伝えるときは、具体的にはこんな言葉になります。
『シュートを決める子だけがヒーローではない。その一つのゴールは、コート内に出ている選手5人全員の力がつながっている。』
『チームで上げる成果は、一人一人の頑張りの足し算ではなく、掛け算。1×1×1×1×0=0 …つまり、みんながどれだけ頑張っても、気持ちのこもった仕事をしてない人が一人でもいると、チームの成果がゼロになることがある。』 

 

…さて、どうでしょう?
子供達に解ってもらいたいバスケでの原理原則と、社会で働く大人の仕事振りなどの縮図は一緒ですね。

 
さらに、子供達への「自分の仕事を自分で見出させる」という指導では、次のようなプロセスを踏みます。

まず、ミニバスケや中学バスケを習う子供達は、日々繰り返して学ぶものが、徹底した「基礎」…スポーツの世界でも、経済用語でも、やはり「ファンダメンタル」という言葉を使うようです。
フットワーク練習、パス練習、シュート練習などの個人スキル以外にも、さまざまなことを学びます。
ところが、そうした練習を通して、どのチームにも、運動神経や身体能力が優れて上達が早い子と、そうでない子の実力差がどんどんできてしまうこともあります。
   
ここで重要なのが、身体能力が低い子、運動神経が鈍い子の「気付かせ方」です。
もちろん努力は継続的に惜しみなく続けるべきですが、頑張ってチームに貢献できる「仕事」を探させること・気付かせること・諭すことは非常に重要になってきます。その「自分の役割・仕事」を意識させた日々の練習なのかが問われるわけです。

バスケでの「仕事」

試合での具体例を挙げてみます。

 

最大のスポットが当たる瞬間というのは…

・シュートを決める。
・相手のパスをスチールして速攻を仕掛ける。
  
これは、誰でもわかりやすい貢献です。
次にわかりやすいのは、選手の近くにボールが近くにある時ですね・・・
   
・ルーズボールへの反応は誰にも負けない。
・ボールがラインを割りそうになっても、絶対最後まで飛びつく。
・シュートが下手くそでも、相手のプレッシャーに負けず、チームの誰よりもゴールに突進して、プレーで味方を鼓舞する。
・凄い勢いでドライブしてくる相手がどんなに怖くても、しっかり体をコースに入れ、相手からチャージングをもらい、味方ベンチを盛り上げる。

…これらもわかりやすい貢献です。
もちろん、身体能力の差に関係なく、貢献できるプレーでもあります。

 
しかし、一番子供達に解ってもらいたいのは、スポットライトが当たらないところ… つまり、ボールが近くにないところで、どれだけ「仕事」をするかが、いかに大事かということなんです。
これを自分の持っている最大限の力を発揮して「仕事」をする子供を、どれだけ育てるか。
まさに身体上の弱者であっても、心の強者になること…その仕事が、どれだけチームに貢献されることになるかを理解させること…良いチームというのは、これが問われる気がします。
  
・ボールが来ないところでも、リバウンド時にしっかりマッチアップ相手にボールを奪われないように、しっかり体を張って優位な場所を獲る。
・攻守の切り替えが早く、背は小さくても足が遅くても、相手の速攻時に誰よりも早く戻ってディフェンスプレッシャーをかける。
・ボールと逆サイドからカットインしてくるマッチアップ相手を、簡単にボールを取らせないようにコースをしっかり防いでしまう。
・味方のドライブする方向を読み、スペーシングに貢献して、その後シュートが落ちるかもしれない予測をして飛び込む。
・相手にリードを許す展開の時、コート内であれ、ベンチであれ、誰よりも一番チームを声で励ます。
・タイムアウトの時、ベンチに戻る選手に、誰よりも先に水筒を渡してあげる。
・正確にスコア表が書け、オフィシャル席よりも早く、状況を知らせるためにファール数をコーチに伝える。

 
観戦している大人の目は、ついついボールの行方ばかり追いがちですが、ボールの無いところで、これら一つでもできる子は、自分の能力を最大限に活かした「チーム貢献」をしています。
それを、指導者も地域ぐるみで子供たちを育てようとする保護者は、そうした輝きを賞賛しようとします。
  
それを続けていると、常にシュートを決めてくるエース級の子も、決して天狗にならず、「みんなが必死につないでくれたボール」という意識も芽生えるようになるかもしれません。
身体能力は低くても、しっかり仕事をし続ける子は、徐々にバスケ全体像が掴めて来ます。
でも、そのお互いの意識こそが、チーム全体で育む「文化」ではないでしょうか?

「仕事」と「作業」は違う

これは、会社組織でも、とても似たことが起きているのではないでしょうか?

  

花形営業マンだけが注目されがちですが、実際のところ、それ以外の裏方事務で働く人の意識と自覚、会社全体像の理解力があると、モチベーションと能力ははるかに向上します。
そして、営業マンも、お客様に喜ばれると、その喜ばれる原因を作ってくれた仕入れ担当、倉庫管理担当、開発担当、経理総務担当などチーム全員へ、喜びを共感して欲しくなります。
 
裏方さんに目を向けた例えでお話ししてみましょう…
倉庫担当が、自分の役割をわからず、単なる棚卸の帳簿付けだけのことなら…「作業」にしかすぎません。
一方、品薄になっている商品をいち早く営業担当と仕入れ担当に伝え、在庫切れをなくして、お客様が欲しいというタイミングを逃さない。
または、出荷の時、自分がお客様の気持ちとなって、初めて商品を手にした感動を伝える為に、ホコリの有無や箱の凹みも丁寧に確認する。
余剰在庫気味の商品については、その商品動向や、営業担当から顧客評判などもヒアリング分析して、仕入れ担当または開発担当に伝え、次の新商品獲得の材料とする。
…ここまで自発的にする人は間違いなく「作業」ではなく、「仕事」をしています。

   

もちろん、大人の職場と、ミニバスケを同じ次元で語り続けるのは、多少無理があります。
しかし、どうでしょう?
「仕事」と「作業」の違いについては、共通の考え方ではないでしょうか…。

味方がシュートを決め易いパスを出すのは「仕事」
味方の次のプレーを考えずにただ流れのまま出すパスは「作業」

 

これは企業事務職でも同じこと。
ただ社内に「作業」で他部署につなぐのではなく、最終的にその先にいる「顧客笑顔」を想って、自分の役割を果たす「仕事」をしているかで、顧客満足は異なります。

もちろん、全ての組織体に言えることではないかもしれません。
しかし、『給料は社長に貰っている』と思って「作業」をしている人と、『給料はお客様の感動や満足の大きさ』が自分に跳ね返ってくると思って「仕事」をしている人の相違点に、本質的に似ています。
組織の目標に向けて、今やっている自分の仕事は何か、全体像の中で何に貢献しているかをイメージしながら動ける人が集まるチームは…確実に強い!それにその仕事は愉しい!

あなたの組織ではいかがですか?

あらためて、結論に向けて整理します…。

 

歓喜の舞台(コート)の上は、スポットライトが当たる場所(ボールがある場所)以外にも、やるべき仕事はたくさんある。
スポットライトが当たっていない場所で、とても感動的な貢献をしているチームは、とても強いし、全員がとても愉しそうにバスケをしている。
なぜなら、その子達は、自分の能力を素直に受け入れながら自分ができる貢献や仕事を理解しているからです。
「自分にできるチームへの貢献」「自分にできる仕事を探す姿勢」…これがあるから、輝いて見えるし…不思議とチーム戦績にもしっかりと良い方向へ表れます。

 
得点王ばかり目立つよりも、日替わりヒーローが出るチームは、間違いなく強い!
それに、そういうチームは、自然とムードも盛り上がりますよね。


逆に自分の仕事が解らないチームの子達は、スポットライトの中に入りたがる…つまり、ボールがあるとこばかりに寄って行ってしまっているチームも多いですね…。
営業部だけが楽しそうで、経理や総務は在庫管理などはつまらないことだと思っている社会人とよく似ています。

 

もしかして…そのような組織運営となってしまっている事業者さんは、もしかしたらスタッフ全員が顧客に向いて「仕事」をしているのではなく、上司や社長の顔色に向いて「作業」をしているのかもしれません…。

 

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